お知らせ&コラム

老舗「虎ノ門 大阪屋 砂場」 本店厨房新設工事

待望の本店営業再開

私どもFUJIXグループにご連絡をいただいたのは20197月のことでした。お電話の主は虎ノ門砂場の社長、稲垣様でした。「店舗移転のご相談をしたい。ついてはご足労願えませんか。」とのことでした。虎ノ門砂場様といえば老舗中の老舗であり、その系譜は明治の時代まで遡ります。弱輩の私でも、そのお名前を聞いて緊張を覚えました。弊社の生き字引とも言えるベテラン社員に、今まで取引したことがあったのかを尋ねましたが、答えはでした。後日上役に連れられ、港区虎ノ門一丁目にある虎ノ門砂場様へ参りました。建物は大正12年に建てられ、関東大震災、東京大空襲、そして東日本大震災を免れてきました。虎ノ門ヒルズと並んで立つ木造建築は、ビル群とのコントラストと相まって、重厚感を漂わせ、威厳すら感じさせる風情でした。2階のお座敷に通されると、間もなく稲垣社長と大旦那様がいらっしゃいました。「お忙しい中ご足労お掛けし、申し訳ございません」の社長の第一声に、大変恐縮したのを覚えています。大旦那様は大変物静かな方で、英国紳士のような佇まいでいらっしゃいました。ご相談内容というのは、接面道路の拡張のため曳家をしなければならず、その間移転する仮店舗工事のことでした 

仮店舗は1階に客席と洗い場、2階に客席と厨房、さらに地下1階には仕込み厨房と3階層に渡り仮店としては大掛かりなプランでした。本店の使い勝手を損なわない客席、設備のレイアウトそして格式に相応しい内装意匠の創意工夫と、デザイン・設計担当者の腕の見せ所となりました。お打合せの度に稲垣社長は、「お忙しい所申し訳ございません」「寒いので上着を着て下さい」などとお気遣いの言葉を掛けて下さりました。パントリーの打合せでは社長の奥様も同席され、その印象は、微笑みを絶やさない柔和さの中にも、揺るがない芯を感じさせる方でした。伝統と格式を偉ぶらず、常に控え目で実直なご夫妻のお人柄を、私は見習うべきものとして尊敬しております。数カ月のお打合せを重ね、晴れてご成約いただいたときは、一同胸をなでおろしました 

仮店舗の工期は、2020年の暑い盛りとなりました。近くにお住いの大旦那ご夫妻とはよくお目にかかり、そのたびに「暑い中ご苦労様、気を付けてくださいね」と労いの言葉を掛けていただきました。 

つつがなく仮店が完成し営業再開したのもつかの間、20221月には本店建屋の曳家工事が完了しました。次は本店工事の取り掛かりとなりました本店建屋隣の新築鉄骨棟に、厨房、事務所、倉庫を作る計画で、仮店営業中からお打合せを行って参りました仮店と同じように3階層に渡り、1階に厨房、2階に打ち場と休憩室、3階に仕込み厨房と事務所という計画でした。給排気計画に伴う天井高や壁開口の確保、隠蔽配管などは建設会社と連携をとりつつ、建物竣工前から施工していきました。 

202237虎ノ門砂場本店の再開となりました。長い工事の間建物を覆っていた殺風景な仮囲いは外され、代わりに「この日を待ちかねていた」といった面持ちの常連の方々に囲まれておりました厨房に立つ稲垣社長にお祝いのご挨拶を申し上げた際には、お客様だけでなく、社長もこの日を待ちかねていたのだなという印象を受けました。 

虎ノ門砂場という永い歴史の片隅に、FUJIXグループの名前が添えられたことを光栄に思います。